私立中学受験を安易に考えると、経済的な問題によって「地獄」を見る可能性があります。受験には塾代、教材費、模試代など高額なコストがかかり、合格後も私立中学の学費や諸費用が家計を圧迫します。以下その実態と対策を詳しく説明します。
まず、受験準備には膨大な費用がかかる。一般的に、受験生は小学4年生から塾に通い始めるが、大手進学塾(SAPIX、早稲田アカデミーなど)の月謝は4年生で3~5万円、6年生になると7~10万円程度になる(参考:各塾ウェブサイト、2024年時点)。これに夏期講習や冬期講習などの特別講習が加わり、年間20~30万円かかることもある。例えば、SAPIXの6年生夏期講習は約15万円が目安だ。さらに、毎月の教材費(1~2万円)、模試代(1回5000~8000円、年間10~20回)、交通費も必要で、4~6年生の3年間で総額200~300万円になる家庭も珍しくない。安易に「塾に行けば大丈夫」と考え、予算を決めずに入塾すると、家計がみるみる圧迫される。特に、共働きで時間がない家庭では、家庭教師やオンライン授業を追加するケースもあり、費用はさらに膨らむ。筆者の知人では、塾代のために親が副業を始めた例もある。この時点で、家計の見通しが甘いと、受験を続けること自体が難しくなる。
次に、合格後の私立中学の学費が重い負担となる。私立中学の学費は、年間100~150万円が相場だ。例えば、2024年の慶應義塾中等部の初年度納入金は約140万円、麻布中学は約120万円(参考:各校ウェブサイト)。これには授業料、施設費、制服代、修学旅行積立金などが含まれるが、別途、部活動費や通学費(定期代やバス代)がかかる。首都圏では、遠方の学校に通う場合、月2~3万円の交通費も珍しくない。さらに、私立は公立と異なり、教科書や副教材も高額で、年間10万円以上になることもある。6年間で総額800~1000万円以上かかる計算だ。安易に「合格さえすればなんとかなる」と思うと、入学後に家計が破綻しかねない。特に、兄弟姉妹も私立を目指す場合、負担は倍増する。教育ローンの利用や祖父母からの援助を当てにする家庭もあるが、返済や人間関係のストレスが新たな問題を生む。実際、進学後に学費が払えず転校を余儀なくされた例も耳にする。
経済的問題が「地獄」となる理由は、単なる金銭的負担にとどまらない点にある。受験準備中、親は塾代を捻出するために残業を増やし、子どもとの時間が減る。子どもは「親に負担をかけている」と感じ、プレッシャーで勉強に集中できないこともある。模試の成績が振るわず、親が「こんなにお金をかけたのに」と苛立つと、親子関係が悪化する。合格後も、学費のために親が節約を強いられ、家族旅行や趣味を諦めるケースは多い。これが積み重なると、子どもは「自分の受験が家族を苦しめた」と罪悪感を抱き、精神的に追い詰められる。筆者が聞いた話では、塾代の支払いで夫婦喧嘩が絶えず、子どもが受験を途中で諦めた家庭もあった。このように、経済的問題は金銭だけでなく、家族全体の幸福を脅かす「地獄」を招く。
この「地獄」を避けるには、どうすればいいか。まず、受験前に家計を見直し、予算を明確にすることが不可欠だ。塾代や学費の総額を試算し、貯金や収入で賄えるか確認する。例えば、3年間で塾に200万円、学費に800万円かかると仮定し、月々の積立額を計算する。ファイナンシャルプランナーに相談するのも有効だ。次に、コストを抑える工夫が必要だ。例えば、大手塾より費用が安い地域密着型の塾や、オンライン塾(月1~3万円程度)を検討する。過去問や無料の学習アプリを活用し、教材費を節約する方法もある。志望校選びも重要で、学費が比較的安い学校(年間80~100万円程度)や、奨学金制度のある学校を視野に入れる。例えば、芝浦精工中学などは学費が抑えめで、進学実績も良好だ。最後に、親子のコミュニケーションを大切にすること。子どもに「お金がかかるから頑張れ」とプレッシャーをかけず、「一緒に挑戦しよう」と励ます方が効果的だ。親が経済的負担をオープンにしすぎないことも、子どもの安心につながる。
私立中学受験は、経済的な計画なしに挑むと、家計の破綻や家族の不和を招く。安易に考えると、塾代や学費で追い詰められ、子どもにも悪影響が及ぶ「地獄」が待っている。受験を決める前に、費用を正確に把握し、家計に無理のない計画を立てることが不可欠だ。冷静な準備が、経済的・精神的な負担を軽減する鍵となる。